高校野球あれこれ　第242号: ぼくらのサイトⅡ

2025年11月04日

高校野球あれこれ　第242号

「石原ゆうじろう」が打って、大阪桐蔭を圧倒！
投手力の神戸国際大付が、16年ぶりの近畿王者に！

　近畿大会が終了し、神戸国際大付（兵庫1位＝タイトル写真）が、智弁学園（奈良1位）に7－6で競り勝って、16年ぶりの優勝を果たした。神戸国際大付は、14日に開幕する明治神宮大会に、近畿代表として出場する。

滋賀学園は逆転後の無死満塁でもう一押しできず
　激しかった準々決勝が終わり、準決勝は各チームとも主戦級の投手を温存。序盤から四球や失策が多く、2試合とも大味な展開になった。智弁は滋賀学園（滋賀3位）と対戦。今大会初登板の両校先発が制球に苦しみ、3回表、智弁が滋賀学園の2人目の右腕・永田貴良（たから＝2年）から4番・逢坂悠誠（1年）の2ランで先制する。滋賀学園も4回に下位打線の活躍で3点を奪って逆転。さらに無死満塁で上位打線に回したが、ここで救援した智弁の右腕・水口（みなくち）亮明（1年）がバックの好守もあって追加点を阻止すると、直後に智弁が2死から追いつく。水口は7回、滋賀学園のエース左腕・土田義貴（2年）から決勝の適時打を放つなど投打にわたる活躍で、決勝へと導いた。滋賀学園は、逆転した4回の好機でもう一押しできなかったのが響き、智弁を3本上回る12安打を放ちながら、終盤に突き放された。

大阪桐蔭は期待の左腕が序盤に失点し完敗
　第2試合には大阪桐蔭（大阪1位）が登場し、エース・吉岡貫介（2年）、大型左腕・川本晴大（1年）に続く期待の左腕・小川蒼介（2年）が先発。しかし初回、神戸国際大付の5番・石原悠資郎（2年）に左中間を割られ、いきなり2点を失う。3回にも4番・川中鉄平（2年）にスクイズを決められ、主導権を握られた。神戸国際大付は、先発右腕の豊岡速伍（そうご＝2年）が要所で決定打を許さず、6回を1失点と力投。大阪桐蔭は終盤、救援投手の不調もあって、失策や押し出し四球であわやコールド負けの大ピンチ。辛くも9回まで持ちこたえたが、1－7で完敗した。神戸国際大付も、エースの秋田依吹、準々決勝で無安打無得点達成の宮田卓亜（いずれも2年）の両左腕を温存したが、豊岡と終盤の3回を救援した橋本大智（2年）の両右腕が、「投手は揃っている」という青木尚龍監督（61）の言葉通り、本来の力を発揮した。一方の大阪桐蔭は、吉岡、川本に続く投手に不安が残り、攻撃陣も劣勢での反発力に欠けた。

序盤の乱戦から、神戸国際大付は救援投手が決勝打
　決勝は、智弁が滋賀学園戦で短い救援をした右腕の高井周平（2年）、神戸国際大付がエースの秋田を先発させた。試合は初回から波乱含みで、まず秋田が2点を失うと、その裏の高井は制球が定まらず、押し出しを連発。救援投手も攻めた神戸国際大付が、一気に6点を奪った。地元の大声援を受けた智弁も攻撃陣が奮起し、3回には神戸国際大付の2番手・豊岡から一挙4点を取り返し、6－6の同点に追いつく。試合は智弁の2番手・水口と神戸国際大付の3番手・橋本が力投。序盤の乱戦がウソのように締まった試合となり、智弁の4番手、エースの杉本真滉（2年）から8回、神戸国際大付の橋本が適時二塁打を放つ。橋本は9回2死から三塁打を浴びて、同点のピンチを招いたが、最後は三振で切り抜け、熱戦に終止符を打った。智弁は水口が連日の好投。野手も下級生が台頭し、まだまだチーム力は伸びるだろう。

神戸国際大付の注目は壱岐島出身の主将に、「石原ゆうじろう」
　神戸国際大付の青木監督は立ち上がりに失点しても、「食らいついていけ」と選手たちを鼓舞し続け、接戦での勝負強さを発揮した。主将の捕手・井本康太（2年）は長崎・壱岐島の出身で、今春に21世紀枠で出場した壱岐の選手たちは、「みんな友だち」だそうだ。16年前には、エースに岡本健（ソフトバンク）、1番打者で石岡諒太（中日～オリックス）がいて力のあるチームだったが、今チームに傑出した選手はいない。しかし今大会で登板した4人の投手全員が、井本の好リードもあって好投した。また、1回戦で本塁打を放っている4番の川中がスクイズを決めるなど、攻守ともに奥が深い。
　そして準々決勝で代打起用に応え、大阪桐蔭戦では先制打を放った石原悠は、110キロの巨漢。石原姓がもう1人いるため、必ず、「いしはら・ゆうじろう」とコールされる。神戸国際大付の今チームは、話題に事欠かない。

神戸国際大付の投手陣は高いレベルでまとまる
　近畿大会は終わったが、センバツ選考（近畿は6枠）に準決勝以降の試合結果は大きく影響しない（はずだ）。なぜならば、準決勝では4校全てが主力投手を温存。控え投手の力量を見定めようという意図が明らかな起用をした。これは4校ともが、甲子園慣れしているチームだからこそできる芸当で、準々決勝までの試合とは、明らかにアプローチの仕方が違う。ただ皮肉なことに、準決勝では滋賀学園が、決勝では智弁が、それぞれ救援で登板したエースが、決勝点を奪われた。その点、神戸国際大付は投手層が厚く、高いレベルでまとまっている。投手陣が力を発揮すれば、神宮大会でも活躍できるだろう。