高校野球あれこれ 第238号

滋賀と奈良のライバル対決、3時間3分の死闘と3日がかりの継続試合は、昨年の敗者が見事に「リベンジ」!

 来春センバツをめざす近畿各府県の大会も大詰め。週末の悪天候で延期、継続試合になっていた注目カードが決着した。残るは滋賀と大阪の決勝、3位決定戦だけとなり、近畿大会に出場する16校中、14校が決まった。

智弁が杉本の投打にわたる活躍で天理に勝利
 奈良と滋賀は昨秋の出場枠が「2」で、準決勝敗退=センバツ絶望だった。奈良は、半世紀にわたる天理と智弁学園のライバル関係がこの秋も継続し、両校が日曜日の決勝でぶつかった。昨秋は準決勝で当たり、天理が智弁に7-2で勝っていた。智弁は近畿大会に進めず、夏も天理に1点差で敗れて、前チームは甲子園出場を逃している。注目の対決は、智弁が左腕の杉本真滉(2年)、天理が速球派右腕の長尾亮大(2年)の両エースの投げ合いとなり、2-2のまま6回を終了。雨が強まったこともあり、火曜日の継続試合となった。中1日で7回から再開された試合は、天理が先に1点を奪うも、智弁の杉本が逆転2ランを放って4-3と逆転に成功し、「3日がかり」で杉本が完投した。杉本は日曜日にも本塁打を放っていて、投打で奈良1位に貢献した。

近江がエースの好投と4番の適時打で優位に
 滋賀は準決勝の残り1試合が月曜日に行われ、滋賀学園と近江が対決。先発メンバーは前日と同じだったが、先攻後攻が入れ替わり、近江の先攻で始まった。近江は初回、4番・箕浦太士(2年)の適時打で先制するも、先発の最速148キロ右腕・上田健介(2年)が、3回に課題の制球難が出て追いつかれる。
 しかし近江の箕浦は5回にも適時打を放って、チームを勢いづけると、上田も要所での三振や併殺などで滋賀学園に決定打を許さず、9回表に5番・杉本将吾(2年=主将)の適時三塁打などで5-1とし、勝負あったかと思われた。

3時間3分の死闘を近江が制する
 しかし粘る滋賀学園は土壇場の9回裏、左半身がつって緊急降板した上田のあとを受けて登板の塚脇颯太(2年)を攻める。4番・吉森爽心(2年)から怒涛の4連打で5-5の同点に追いつき、試合の決着は延長タイブレークに持ち込まれた。10回表の近江は、1死2、3塁から1番・吉田大翼(だいすけ=2年)の右中間三塁打で勝ち越すなど、計3点を奪う。諦めない滋賀学園も1点を返し、なおも2死満塁と攻めたが、最後は三塁からマウンドに上がった杉浦憂志朗(1年)が吉森から三振を奪い、8-6で近江に軍配。3時間3分の死闘にピリオドを打った。

近江の148キロ右腕は9回に左半身がつって降板
 公式戦で滋賀学園に3連敗中だった近江は、多くの選手がうれし涙を流し、4月に就任したばかりの小森博之監督(41)も「最後、全員がひとつになれた」と、感無量の表情だった。上田(タイトル写真右から3人目)のこの日の最速は144キロで、8回1/3を9安打9奪三振の2失点(自責1)。「崩れそうになった時、しっかりと気持ちを切り替えられた」と、マウンドの猛々しさからは想像できないほどの小さな声で答えた。小森監督は「自滅しなかったところは成長。投げ抜きたい気持ちはあったと思うので『(完投は)近畿やその先にお預けやな』と言った」と、エースのさらなる奮起に期待した。

滋賀学園は伴田が180球で10回を完投
 敗れた滋賀学園は、エース左腕の土田義貴(2年)が腰痛で登板を回避。この日は右腕の伴田蒼生(ばんだ・あおい=2年)が先発し、10回を完投。180球の熱投も実らずの惜敗だった。山口達也監督(54)は土田について、「お兄ちゃん(前チームの土田悠貴投手)とは真逆。(本人が)『いける』と言ったら全然ダメで、『腰が痛いならやめとけ』と言ったらすごい投球をする。何とも言えない」と、今後については明言しなかった。センバツではベンチ外だったが、夏の滋賀大会では兄弟リレーで相手を完封するなど、土田は新チームにとって欠かせない存在。好機で2度、三振に倒れた前チームからの4番・吉森にも「精神的に強くならないと」と、山口監督は注文をつけた。

龍谷大平安が乙訓に逆転サヨナラで1位確保
 京都は決勝が月曜日にあり、龍谷大平安が乙訓にタイブレークの延長11回、2-1で逆転サヨナラ勝ちした。川口知哉監督(46)が就任して初めての京都大会の頂点で、自身が持つセンバツ最多出場42回の記録更新を懸けて、近畿大会に1位で乗り込む。2位の乙訓は、惜しい敗戦だった。ここまで危なげなく勝ち進み、3年ぶりの京都1位は目の前だったが、11回2死からの暗転だった。左腕・丸本陽己(2年)は前チームからの主戦で、最速136キロの直球に、スライダーとチェンジアップを交える。「まっすぐでインコースをついて、チェンジアップでタイミングを外す」と、ピッチングスタイルは確立されている。市川靖久監督(42)は、「調子が悪くても経験がある」と、安定感のあるエースに期待を寄せた。

近大新宮が、剛腕の市和歌山に逆転勝ちで初優勝
 和歌山の決勝も継続試合になり、1点をリードされた近大新宮の7回表から翌日に再開。8回に市和歌山の最速151キロ右腕・丹羽涼介(2年)を攻めて、近大新宮が2-2の同点に追いつくと、9回にも2死から勝ち越し点を奪い、3-2で逆転勝ちした。近大新宮は初優勝で、3年ぶりの近畿大会出場。3年前は初戦で敗れ、センバツを逃している。今秋は、全国屈指の実力を持つ智弁和歌山に、終盤の一挙8得点で逆転勝ち。今春のセンバツに出た2校を連破し、勢いに乗って近畿大会に乗り込む。

近畿は今週末に出場校が出揃う
 これで近畿大会に出場する16校中、14校が決まった。今秋は、京都と和歌山が2校の出場となる。滋賀と大阪は決勝が未消化で、滋賀は11日、大阪は12日に、3位決定戦と合わせて行われる。

 滋賀=彦根東、近江

   3位決定戦は近江兄弟社ー滋賀学園

 京都=1位・龍谷大平安、2位・乙訓

 大阪=近大付、大阪桐蔭

   3位決定戦は太成学院大高ー金光大阪

 兵庫=1位・神戸国際大付、2位・市尼崎、3位・東洋大姫路

 奈良=1位・智弁学園、2位・天理、3位・橿原学院

 和歌山=1位・近大新宮、2位・市和歌山

 組み合わせ抽選は14日の火曜日に行われ、1位校同士は初戦で当たらない。また2位校は、同府県の1位校と逆のゾーンに入る。3位校は同府県との初戦対戦を避けるように配慮して抽選する。昨年は初戦3位同士が2カードあったが、これはたまたま。2位と3位は、準決勝で負けているか、決勝で負けているかの違いだけで、直接対決をしていなければ同列と考えていい。

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