高校野球あれこれ　第237号: ぼくらのサイトⅡ

2025年09月30日

高校野球あれこれ　第237号

智弁和歌山が、履正社が負けた！大荒れの近畿府県大会は終盤戦へ！
京都では名指導者率いる無名校が4強入り

　秋はまだチームが固まっておらず、何が起こるかわからない。特にこの秋は、近畿で多くの波乱が起こっている。6府県のトップを切って、兵庫では決勝進出の2校が決まり、次の週末には、近畿大会の出場校が続々と名乗りを挙げる。

智弁和歌山が終盤の大量失点で姿を消す
　まず土曜日に大きな驚きだったのが智弁和歌山の敗退だ。8校による二次予選が始まり、2勝すれば決勝進出となって、近畿大会出場が決まる（今年の和歌山は2枠）。新人戦で市和歌山を11－0で破って、盤石の優勝候補だった智弁和歌山が、甲子園未経験の近大新宮に4－9で敗れたのだ。7回まで3－1と優勢に運んでいた智弁和歌山が、8回に一挙8点を奪われ、大逆転された。ここ数年、バッテリーを中心に堅実な野球で勝ちを重ねたチームカラーは受け継がれているはずだったが、まさかの大量失点はこの時期だから起こったことなのか。勝った近大新宮は準決勝で名門の箕島と当たり、準決勝のもう1試合は市和歌山と日高中津の顔合わせとなった。

昨秋に近畿大会出場の履正社と大院大高が敗退
　大阪は5回戦と準々決勝が土日の連戦で行われ、土曜日に履正社が、日曜日に大阪学院大高が敗れ、昨秋の近畿大会に出場した有力2校が、近畿大会を前に姿を消した。履正社は4回戦でも強敵の東海大大阪仰星に競り勝っていて、5回戦の相手の大商大堺もなかなかの難敵。8回に追いついたものの、9回に1点を奪われ、サヨナラ負けを喫した。早い段階から強敵続きで、接戦を勝ち切れなかった。大院大高は、前チームから苦手にしている近大付が相手で、3回に3点を取られて主導権を握られ、6－2で完敗した。前チームから出場していた選手も多く、「大阪2強」をしのぐ戦力とも言われていたが、近畿大会で本領を発揮する前に敗れ去った。大阪桐蔭は土日とも別格の強さを見せて4強入りし、準決勝で金光大阪と当たる。伝統的にやや苦手とする相手で、どんな試合展開になるか。もう1試合は、大商大堺を18－2で圧倒した太成学院大高と近大付が対戦する。大阪は上位3校が近畿大会に進む。

神戸国際大付と市尼崎が近畿大会出場を決める
　兵庫では、今夏の県大会決勝カードの東洋大姫路と報徳学園が準々決勝で当たるというくじのいたずらがあり、東洋大姫路が5－2で勝った。前評判では報徳有利と言われ、安打数でも相手の倍以上の11本を放ったが、序盤の5失点を挽回できなかった。これで報徳は近畿大会出場を逃し、センバツ絶望となった。しかし翌日の準決勝では、公立で唯一、勝ち残った市尼崎が、その東洋大姫路に5－1で快勝し、決勝進出。近畿大会出場を決めるとともに、神戸国際大付と兵庫1位の座を懸けて戦うことになった。東洋大姫路は、彩星工科との3位決定戦で、センバツ出場への望みをつなげられるか。兵庫は上位校の実力が接近していて、神戸国際大付と彩星工科も0－0で延長タイブレークにもつれ込み、神戸国際大付の2－1での逆転サヨナラ勝ちだった。

天理が奈良大付との投手戦を制す
　奈良も準々決勝で、春夏連続甲子園出場の天理と、好投手・新城楓雅（2年）擁する奈良大付が対戦。先制を許した天理が3回に逆転し、エース・長尾亮大（2年）がリードを守り切って3－1で勝った。両エースが序盤に失点するも立ち直り、ともに完投というハイレベルな投手戦だった。奈良は近畿大会のホスト県で、今秋は好投手が目立つ。準決勝では、好左腕・杉本真滉（2年）の智弁学園と、文武両道の名門・郡山の注目カード。そして天理には、甲子園未経験の橿原学院がぶつかる。奈良の近畿大会出場枠は3で、準決勝で「2強」がどんな試合を見せるか。また郡山は久しぶりの甲子園チャンスをモノにできるか、注目したい。

京都準決勝は古豪対決と公立実力派対無名校
　京都の準々決勝は、3試合がコールド決着となり、準決勝の対戦が決まった。センバツで史上最多の42回の出場を誇る龍谷大平安と、夏の第1回大会優勝の京都二中の伝統を継承する鳥羽というオールドファン垂涎のカード。そして初の近畿大会出場を狙う京都文教には、公立で実力随一の乙訓が当たる。京都は2校の出場で、準決勝で敗退すれば近畿大会には進めない。いずれも私学対公立で、3校の甲子園経験校に交じって京都文教は全国的に無名。プロフィールを紹介するので、高校野球ファンにはぜひ、注目していただきたい。

文教の林監督は、智弁和歌山で全国制覇を経験した名指導者
　京都文教は明治37（1904）年創立の家政学園という浄土宗系の女子校が前身で、23年前に現在の校名となり、21年前の創立100周年を機に共学となった。創部は17年前で、7年前の秋に林守監督（65）が就任すると、強豪揃いの京都でも徐々に頭角を現すようになった。林監督は智弁和歌山の責任教師として、高嶋仁・前監督（79）とのコンビで全国制覇を経験した名指導者。智弁学園の監督も歴任し、甲子園は知り尽くしている。
　今秋は、エース・玉井幹大（2年）を故障で欠きながらも、鹿取凛音（2年）らが奮闘。京都共栄学園との準々決勝は序盤から激しい攻防となり、3－3で迎えた4回に、1番・堀江柊希（1年）の左中間三塁打などで3点を奪って勝ち越し。鹿取のあと樋口瑞輝、山川悠悟の1年生リレーが決まって6－3で逃げ切った。
　林監督は「打線がよくつないだし、ピッチャー陣がよく努力している」と、選手たちを褒めた。夏の京都大会で故障した玉井に関しては、「すでに投球練習はしているが、万全になってから送り出したい」と慎重な姿勢だが、準決勝は来月4日。今週の調整次第では、初の近畿大会出場が懸かる乙訓戦での登板があるかもしれない。

滋賀は国スポで中断し、4日に再開
　国民スポーツ大会のために秋季大会が中断している滋賀は4日に再開し、近江兄弟社ー彦根東、滋賀学園ー近江の顔合わせで準決勝が行われる。滋賀も3枠で、翌日の3位決定戦まで目が離せない。全国的にも週末には大きな動きがあり、この2年、春夏の甲子園を沸かせた健大高崎（群馬）、西日本短大付（福岡）が敗退し、地区大会進出を逃した。次の週末も、各地で熱い戦いが繰り広げられるだろう。