高校野球あれこれ　第215号: ぼくらのサイトⅡ

2025年04月15日

高校野球あれこれ　第215号

名伯楽と元ドラ1戦士が率いる古豪2校は、
かつての「大阪私学7強」の一角！「大阪2強」を脅かすか？

　センバツで98年ぶりに出場なしとなった大阪勢。ここ20年余りは、大阪桐蔭と履正社の「大阪2強」が他を圧倒しているが、大阪高校球界の長い歴史に燦然と輝く足跡を残した名門校にも、復活の兆しがある。

大体大浪商は昨年、創部100周年を迎えた
　その筆頭格が、大体大浪商（タイトル写真）で、戦前から甲子園を沸かせ、春夏とも2回ずつの優勝を誇る。戦後の大阪は、今で言う強豪私学がどこよりも早く台頭し「私学7強」（後述）などと称されもした。中でも浪商は、歴史の長さや球界全体への貢献度もあって、大阪高校球界のシンボル的存在でもあった。牛島和彦（元中日ほか）と香川伸行（元南海）のバッテリーで、甲子園を盛り上げたのが46年前。その後はセンバツに一度、出場しただけで、若いファンには馴染みが薄い。昨年、創部100周年を迎え、復活への機運が高まっている。

中村監督は全国の高校、大学、社会人で監督
　その期待を一身に受けるのが、一昨年秋に就任した中村好治監督（71）で、華麗な球歴を持つ。浪商では3年の夏、大阪決勝でPL学園に敗れて甲子園出場を逃したが、専大を経て、社会人野球の鐘淵化学、神戸製鋼で活躍した。「体力だけはあったんで」（中村監督）と、社会人としては異例の39歳まで現役を続けたあとは、田村コピーの監督に就任。日章学園（宮崎）の監督として23年前の夏に同校を甲子園へ導き、主砲の瀬間仲ノルベルト（40）をプロ入り（中日）させた。

　その後、三重中京大で楽天の則本昂大（34）を指導するなど「名伯楽」ぶりを発揮すると、三重の監督として、2014年夏に準優勝という輝かしい実績も残した。昨夏に取材した際、「母校の監督は、やりがいもあるし楽しい。OBの期待の大きさを感じている」と話した中村監督。就任早々の一昨年秋には、大阪桐蔭と1点差の激戦（4－5で惜敗）も演じ、手応えをつかんでいるはずだ。

興国の喜多監督はロッテのドラフト1位
　もう1校が興国で、こちらは1968年夏の50回記念大会で全国制覇を果たした。過去、春5回、夏2回の甲子園出場があり、最後の出場（75年夏）からちょうど50年が経過している。長く低迷していた名門に息を吹き込んだのが、元プロ選手の喜多隆志監督（45）で、こちらはアマ時代から常に脚光を浴びてきた。智弁和歌山では、現在の同校監督である中谷仁捕手と同期で、夏の甲子園優勝。慶大では歴代10位タイとなる114安打を放った。ドラフト1位（1巡目）で入団したロッテでは、わずか5年で現役を引退したが、母校・智弁和歌山の副部長などを経て、興国に奉職。2018年、監督に就任した。

履正社を破り決勝進出も、大阪桐蔭に惜敗
　喜多監督の好指導で力をつけたチームは、大阪大会の上位常連となり、21年夏の大阪大会では、準決勝で履正社に延長14回タイブレークの末、5－4でサヨナラ勝ちして決勝進出。大阪桐蔭には9回に2点差を追いつく粘りを見せたが、惜しくもサヨナラ負けして46年ぶりの甲子園出場を逃した。慶大で同期だった三木仁氏（楽天・三木監督の実弟）ら、元プロ選手も指導陣に加わるなど、学校側のバックアップ体制も申し分ない。

　一昨年秋には、大阪3位で近畿大会に出場。近江（滋賀）に惜敗（0－2）してセンバツ選出圏には入れなかったが、続く昨春も大阪で2位と、甲子園が手の届くところにまで来ている。このチームのエースだった熊谷直也投手は、今春、国立の強豪・和歌山大に進学した。

「大阪私学7強」とは？
　そして大阪の高校野球を語る際、必ず話題に上るのが「私学7強」である。戦後の学制改革以降からの30年ほどは、ほぼこの7校のいずれかが甲子園に出ていた。その7校とは、上記2校に加え、明星、PL学園、北陽（現関大北陽）、大鉄（現阪南大高）、近大付で、北陽と大鉄以外は全国優勝の経験がある。このうち明星は、1970年ごろから進学校にシフトし、野球部の強化は行っていない。また80年代に入ると上宮が台頭し、7強は完全に崩れた。独走状態を築いたPLも、2017年夏を最後に休部が続いている。そして2000年以降の大阪は、大阪桐蔭と履正社が牽引するようになる。

大阪が群雄割拠時代に戻るか？
　その2強が昨秋の近畿大会で、揃って初戦敗退。近畿大会史上初の珍事だった。これが2強の陰りの端緒となり、かつてのような群雄割拠の時代に戻るのか。割って入るとすれば、昨季に2強を破った大院大高が筆頭格。さらに、かつて7強の一角を担った浪商と興国は、好指導者に加え、伝統の力がある。今年の大阪は、いつも以上に熱い夏になりそうだ。