高校野球あれこれ　第212号: ぼくらのサイトⅡ

2025年03月19日

高校野球あれこれ　第212号

[センバツ高校野球]日本ハム・山崎福也が名を残す大会記録とは?

　社会人野球・東京ガスの取材に行った。窓口になってくれたのは、我如古盛次マネージャー。その名前にピンと来た人は、かなりの高校野球通だ。我如古といえば2010年、センバツで優勝した興南(沖縄)の主将にして三塁手。打っては三番で、関西(岡山)との初戦は4打数3安打、智弁和歌山戦が5—5(この試合では、前の試合から最多連続安打8の大会タイ記録をマークしている)、帝京(東京)戦4—2、大垣日大(岐阜)戦4—2と、4試合で12安打を積み上げる。1995年、観音寺中央(現観音寺総合・香川)の室岡尚人がマークした個人通算最多安打13に、あと1本と迫っていた。

　実は、興南が決勝で対戦する相手・日大三(東京)にも、同じ記録に王手をかける選手がいた。山崎福也(現日本ハム)。テレビ番組『球辞苑』・投手の打撃編でゲストに呼ばれたように、投手ながら打撃もいい選手だ。

　その決勝では、3回に山崎がヒットを放って先にタイ記録に到達。我如古も3打席目にしぶとくライト前に落とし、そろって大会記録に名を連ねた。ただし2人とも、延長12回にもつれたこの試合でヒットはその1本だけ。大会通算ではお互いに23打数13安打の打率.565をマークしたが、新記録達成はならなかった。

12本までは行くのだけれど……
　で、ちょっと調べてみた。それ以降、この記録に迫った選手はいたのだろうか(対象はベスト4以上)。まず、コロナ禍で中止になった20年を除く直近10大会。14年には準優勝した履正社(大阪)の西村卓浩が通算21打数12安打、17年優勝した大阪桐蔭の山田健太がやはり21打数12安打、22年優勝の大阪桐蔭・丸山一喜が20打数12安打と1本、届いていない。打率は、6割ちょうどの丸山を筆頭に我如古、山崎をしのぐが、3人とも12安打に到達したのは決勝での4もしくは5打席目だったから、もう1本、というのは酷な状況だった。

　それにしても13安打というのは、90回以上の歴史で3回しか達成されてないだけあって、なかなか手が届かない数字だ。13本どころか10本に到達するのも非常にまれで、ほかには14年豊川(愛知)の中村胤哉が20打数11安打。ここまでに挙げたケースはいずれも決勝進出校だが、このときの豊川はベスト4で、4試合での11安打だから、5試合戦っていたらおもしろかった。

　18年、準優勝の智弁和歌山・冨田泰生が21打数10安打、22年ベスト4の浦和学院(埼玉)・金田優太(現ロッテ)は、4試合17打数で11安打、打率.647というヒットメーカーぶりを見せている。こちらも、決勝まで進めば記録達成の可能性はかなりあった。23年に優勝した山梨学院では、進藤天が21打数11安打。こうして見ると、プロ入りはともかくとしていずれも大学、社会人で活躍中の選手が目立つ。

　せっかくだからもうちょっとさかのぼると、我如古・山崎が13安打した翌11年には、準優勝の九州国際大付(福岡)・高城俊人(元DeNAほか)が19打数12安打、優勝した東海大相模・佐藤大貢が23打数11安打。髙城は打率も高いうえ、12安打目が決勝の第1打席と、こちらも記録達成のチャンスはあった。この年はベスト4の日大三・畔上翔も16打数11安打。13年優勝の浦和学院・山根佑太は、決勝の3打席目から3安打して24打数12安打としている。

　飛ばないバットの導入で投高打低傾向が続き、最多安打記録の更新はますますハードルが高くなるのだろうか。