高校野球あれこれ 第88号

大阪桐蔭のエースに広陵のスラッガー...。
センバツの注目選手を一挙紹介!


今年は春の甲子園で、誰が主役になるのか?

1月27日に第95回選抜高校野球大会(センバツ)の出場校36校が発表された。その出場校の中には、今秋のドラフト会議をにぎわせそうな逸材が何人もいる。

毎年、春のセンバツでスカウト陣の評価を高め、プロの舞台で花を咲かせる選手がいる。例えば、昨年に高卒ルーキーながら佐々木朗希(ロッテ)とバッテリーを組み、完全試合達成に大きく貢献した松川虎生はそのひとりだ。

松川に続くような存在は今年もいるのか。特に見逃せない有望選手をチームごとにピックアップしてみよう。

優勝候補大本命はセンバツ2連覇を狙う大阪桐蔭である。2年時から常勝軍団のエース格を張る左腕・前田悠伍は高校最終学年を迎える。

高校2年時点での完成度でいえば、過去最高と評しても決して過大評価ではない。ストレートの球速は常時140キロ前後でも、重力に逆らうような猛烈なキレがあり空振りを奪える。スライダー、カーブ、チェンジアップなどの変化球を自在に操り、コントロールもいい。

さらには大舞台でも動じないマウンド度胸と、状況に応じて投球を変えられるクレバーさも併せ持つ。ここまで総合力の高い投手が、強打者ぞろいの大阪桐蔭打線の援護を受けるのだから、「反則」とすら感じてしまう。

昨秋は大阪大会で右脇腹を痛めるアクシデントがあり、万全とは言い難かった。それでも、近畿大会や明治神宮大会をエースとして投げ抜き、優勝に導いた。万全な状態で春を迎えられれば、前田が高校生を相手に打たれるイメージは湧いてこない。

さらに、全国から有望選手が集まる大阪桐蔭は、140キロ台中盤の快速球を武器にする右腕・南 恒誠ら好投手を複数擁する。前田ひとりを酷使することなく勝ち上がれるのも大阪桐蔭の強みといえるだろう。

春のセンバツは歴史的に好投手が多く出現する傾向がある。西の左腕の前田に対し、東の右腕として要注目なのが平野大地(専大松戸)。高校2年時点で最速151キロと大台を突破している本格派右腕だ。

昨秋は右肩や肋骨(ろっこつ)に痛みがあり本調子ではない中、関東大会準優勝に貢献している。スライダー、カーブなどの変化球も制御できて、ただの力自慢ではないことを証明した。体調を万全に整えてセンバツを迎えられれば、藤浪晋太郎(アスレチックス)らが計測した153キロのセンバツ最高球速の更新も夢ではない。

昨夏に東北勢として初めて甲子園で優勝し、須江 航監督の「青春って、すごく密なので」という名言も飛び出した仙台育英も、豪華投手陣を擁して優勝候補の一角を占める。右投手の髙橋煌稀、湯田統真、左投手の仁田陽翔といずれも最速140キロを軽く超える本格派がそろう。

中でも仁田は角度のある速球に、空振りを量産できる縦のスライダーが武器。昨秋までは好不調の波があり、不安定さを露呈していたが、ひと冬越えて大化けする可能性もある。

捕手では堀 柊那(報徳学園)の評判が高い。馬力があって正確なスローイングと、グラウンドでの支配力。捕手らしからぬ俊足と、急成長中の打撃を武器にする。1学年上でドラフト1位捕手になった松尾汐恩(大阪桐蔭→DeNA)の同時期より上、という声もあるほどだ。

報徳学園には盛田智矢という潜在能力の高い大型右腕もおり、堀とのバッテリーは要注目。チームとしても、昨秋の近畿大会決勝で大阪桐蔭に0-1と惜敗しているだけに、打倒・大阪桐蔭に並々ならぬ闘志を燃やしてくるだろう。

現時点での完成度は低くても、将来とんでもない存在になる可能性を秘めている友廣 陸(北陸)も紹介しておきたい。

身長185㎝の長身でスラリと伸びた手足をしなやかに使う投球フォームは、いかにも大器のにおいがする。現時点での球速は130キロ台がほとんどだが、肉体的に成熟すれば球速が跳ね上がるだろう。縦に大きく割れるカーブもあり、将来的に日本を代表する投手に成長しても驚かない。

全国トップクラスの高校だけでなく、それぞれの事情を抱えた多様な高校が出場するのも、センバツの魅力だ。

その意味で見逃せないのは、21世紀枠で選出された徳島県の城東。選手12人、女子マネジャーひとりと少人数ながら、昨秋の徳島大会ではベスト4進出と健闘した。

ノッカーを務めるのは、女子マネジャーの永野悠菜。野球未経験ながら幼なじみの部員に誘われ、猛練習の末にノックを打てるまでに成長した。甲子園でのノックも話題を呼びそうだ。

春の到来を告げる戦いは、3月19日に開幕する。今年はどんなドラマが起きるのか、楽しみに待とう。

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